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商売人?それとも経営者?

[以下は、あるコンサル記事の抜粋です]

俗に言う「資金」
一般的に言われる資金とは、金庫の中に眠っているお金、そして通帳に書かれている現金残高を指します。
しかし、私たちのような会計事務所、またはコンサルティング業界では
「目の前にある現金から借入金を差し引かなければ、本当の資金とは言えない」と考えています。
簡単に言うと、目の前に1億円あるからといって、1億円が自社のものかというと、そうじゃない。2億円の借入金があれば、マイナス1億円が実際の資金の有り高という考え方をするわけです。
つまり、目の前のお金が「増えた」「減った」と、ここに一喜一憂してもなかなか実態は見えてきません。
今回は、我々の考える資金の概念をお伝えしながら、それをいかに残していくか?そして増やしていくか?をお伝えできればと考えております。

 

「資金」は、永遠のテーマ
皆様の会社も入れて、日本全国の企業数(法人)は約260万社あります。
この数、以前は300万社を超えていましたが、年々減ってきています。そして、約7割が赤字の法人です。
税金を納めていないという意味での赤字です。ご存知の通り、日本では企業の所得がマイナスであれば税金を納めなくていいのです。
国税庁は、「どれくらいの企業が税金を納めてくれるかな?」と毎年統計データを取り発表していますが、実態は残りの3割の企業で税金を納めているのです。
国の財政が厳しいと言われていますが、厳しい所以は何かと言えば、多くの企業が赤字だから税金を納めていないゆえ、日本の財政が厳しい?そこにつながるというわけです。
たまたま日本の税収が少ないのではなく、多くの企業が黒字であれば、世の中が変わっていく。
日本の財政はもっともっと豊かになるわけです。
しかし、実際には多くの企業が税金を納められない状態だということです。

 

「黒字企業」の実態━
我々は税理士法人を営んでおり、年間約3000社の決算を組んでいます。そこで統計を取ってみると、実は残りの3割の黒字企業も2つに別れることが分かります。
5%と25%です。
5%の企業は真の黒字企業。
税引前で大体売上高に対し3%以上の利益を残す真の黒字企業は全体の5%しかありません。
25%は売上高に対し。0~2%ぐらいの利益を残している企業で、我々は「わずか企業」と言っています。
黒字とされる30%の企業も、実は大多数が「わずか企業」なのです。
では、この「わずか企業」が計上する利益とは一体いくらでしょうか。
年商は億単位であるにも関わらず、納税額に直すと5千円や1万円程です。
銀行に提出する決算書で3期連続赤字となると、新規融資が難しくなります。
貸し渋り、貸し剥がし、金利上昇…。
さらに、建設業では経営状態が悪いと公共工事への入札資格などを失う場合もあります。
当然そういったことを考えれば、「わずか企業」は無理にでも黒字にしようと「税金を納めるだけの利益をわずかに残した黒字の決算書」を作成・提出します。
赤字を黒字にする=実態をごまかす…
これをいわゆる「粉飾」と言います。
「よく見せる」「お化粧する」という意味の粉飾です。
粉飾しているにもかかわらず、なぜ摘発されないのか?
税務署は「黒字を赤字」にして法人税を逃れようとする場合(脱税)は、徹底的にその企業を調査しますが、「赤字を黒字」にする場合には、5千円でも1万円でも税収が増えることになるためありがたいのです。だから、決して取り締まることはありません。
ただ、困るのは銀行です。銀行からすれば、こんな困った決算書でお金を借りようとするお客さんは、言ってしまえば「不良顧客」です。融資した後、もし焦げついてしまったら責任問題に発展します。
よって、銀行は非常に慎重になるのです。まして、5千円や1万円ぐらいの利益水準となると、銀行の目は大変厳しくなります。
赤か?黒か?と言うと、査定上黒ですから融資の対象になるわけですが、金利はそこそこ取らなきゃならないという厳しい判断をせざるを得ません。
一方、黒字だけれども、わずかな税金に抑えようとする企業。
そういった企業もこの中に入ってくるわけですね。合法的にやれば節税。
違法的にやれば脱税。
(ちなみに、我々は節税の支援はしますが、脱税は絶対にしません。)
なぜ、税金を抑えようとするのでしょうか?背景にあるのは、納税資金がないということなのです。
日本全国の約260万社の実質95%(赤字企業+わずか企業)は厳しい経営状態に置かれていると言っても過言ではありません。

 

なるのは簡単。続けるのが難しい社長業。
日本には約260万社の会社があるので、「社長」と呼ばれる方が法人だけで約260万人いらっしゃるということです。
個人事業主を含めると約500万人ぐらい。実は、一番多い職業が社長業なのです。そして、明日からでもなれる。
ところが、続けるのが難しいのです。5年、10年続く企業というのはほんのわずか。多くの社長はほとんど短い期間で淘汰されてしまいます。
さて、「社長」には二通りの方がいます。
一つは、商売をやっている社長。「商い」をしている方です。
俺が営業をする。俺が現場に行く。俺がモノをつくる。俺が納品する。俺が資金回収に行く。問題があったら俺が動く…。言うなれば、身体の汗を流し、一生懸命動く「商売人」です。
もう―つは、頭の汗を流し、人を動かす「経営者」。
身体から流れるものは汗ですが、頭の汗を流すと、知恵があふれてきます。これが、経営者です。商売をなさる方なのか、経営をなさる方なのか・・・つまり、身体の汗をかく方なのか、頭の汗をかき知恵を出す方なのか。この二通りに分かれます。
例えば、身体の汗をかく商売人は売上を求めます。足元を見て、仕事落ちてないかな?何かないかな?と探して歩きまわっている…そのようなイメージです。今年、今月、今、この瞬間の売上をつくることに奔走する。これが「商売人の仕事」です。
一方、「経営者の仕事」というのは、売上ではありません。

 

経営者が求めているのは資金です。
そのため、お金をつくるお金を残すことを仕事にしています。
では、お金を残すこととは何か?それは利益を残すということです。
利益率を高めることとは、言葉を変えると、未来をつくるということです。
商売人の社長がなさる「今の売上づくり」ではなく、経営者は「未来の売上づくり」をしているわけです。
商材の付加価値を高め、付加価値の高いモノを売るためのヒトを育てる・・・
そうしたことは、3年後、5年後の売上をつくることにつながっているわけです。そこには「知恵」が必要です。
ゆえに、身体ではなく頭の汗をかかなくてはならない。
利益を残すために、「どういう人を育てるべきなのか」「どういう売り方をするといいのか」「どういう商品、サービスを提供することがいいのか」そして、「それをどのように資金として残すのか」。こうしたことを常に考え実行している方々を、我々は経営者だと考えています。

経営者の条件

よく人の意見を聞く、これは経営者の第一条件です。
私は学問のある他人が全部、私より良く見え、どんな話でも素直に耳を傾け、自分自身に吸収しようと努めました。
~松下幸之助~

偉大な経営の神様によると、
まじめで熱心で謙虚な人間らしい人格が、経営者の条件その一である。
またその経営者を指導するコーチングの神様によると、

コーチングとは経営者をもっと賢くすることでも、もっと金持ちにすることでもない。
例えば他人を認めないなど一緒に働く人たちが不快に思うその人の個人的な癖を探し出し取り除く手助けをすることだ。
~マーシャル・ゴールドスミス~

経営者が目指すべきは、たくさん勉強し賢くなることでも収入を向上させることでもない。経営者自身の悪癖や難点に対し日夜朝暮に改善する努力を怠らないことに尽きる。
古代より伝わる格言によると、

子曰(しい)わく、我知ること莫(な)きかな。
子貢(しこう)が曰わく、何爲(なんす)れぞ其れ子を知ること莫(な)からん。
子曰わく、天を怨(うら)みず、人を尤(とが)めず、下学(かがく)して上達す。
我を知る者は其れ天か。
(訳)孔子がおっしゃいました。「私の事を理解してくれる者が誰もいない。」
子貢(しこう)がこれを聞いて、「どうして先生を理解できない者がおりましょうか。」
と尋ねると孔子は、「天に怨みを持たず、人を非難せず、これまで身近な事から高尚な事に至るまで学んできた。天のみが私を理解してくれる。」と答えられました。
~孔子の論語~

現代にもなお、これらの格言が大勢の人に親しまれる理由は、畜生などに決して真似のできない人間性の「価値」について教えているからだ。
孫子の兵法は敵と己いずれに価値があるのかを問ており、
史記は「天道是か非か」の思想といわれる通り、生と死・男と女などの価値について問う。

子の曰く、吾れ十有五(じゅうゆうご)にして学に志す。
三十にして立つ。
四十にして惑わず。
五十にして天命を知る。
六十にして耳順(みみした)がう。
七十にして心の欲する所に従って、矩(のり)を踰(こ)えず。
(訳)わたしは十五歳で学問に志し、三十になって独立した立場を持ち、四十になってあれこれと迷わず、五十になって天命(人間の力を超えた運命)をわきまえ、六十になって人の言葉が素直に聞かれ、七十になると思うがまま振舞って、それで道を外さなくなった。
~孔子の論語~

とあるように、人の生き方そのものの価値について問うているものと理解できる。
つまり我らは自身の価値・組織の価値について熟考を重ねることで、自身の悪癖や難点を克服するに至るのである。具体的には一つ一つの行動、それに伴う結果がいずれも価値のあるものでなければならない。
日常における一般的な相反する判断では、
「喜と怒と哀と楽・善と悪・進と退・売と買・前と後・表と裏・先と後」
など「価値」の有無を見極めなければならない。
中期的な判断では、
なぜ売上・利益を上げなければならないのか?
なぜ年商10億を目指すのか?
なぜ会社を増やし社長を創るのか?
など「価値」を見出す智恵が必要となる。
そして長期的な判断では、
如何に後継していくのか?
どう臨終を迎えるのか?
など「価値」ある人物とならない限り、その答えが導かれることは無いだろう。

 

総じて真の経営者とは、徳のある人格者すなわち価値のある人格者でなければならない。

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