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小さな警備会社は「誰を選ぶか」より「誰に選ばれるか」――創業期に必要な人財戦略
警備業で独立を考えている方と話していると、ときどき気になることがあります。
「もっと質の高い警備員を採用したい」
「管制には、言われる前に動いてほしい」
「経理なら、このくらいできて当然ではないか」
気持ちはよく分かります。せっかく自分の会社をつくるなら、意欲の高い人財と働きたい。仕事を任せられる管制や、正確に処理できる事務スタッフに支えてほしい。経営者として自然な希望だと思います。
ただし、会社を始めたばかりの段階で、応募してきた人の欠点ばかりを探したり、周囲に完成された能力を求めたりすると、経営はうまくいきません。
創業したばかりの小さな会社は、「人を選べる強い会社」ではなく、まずは求職者や取引先から「選んでもらう立場」だからです。
目次
- 警備業は、小さな会社が多数を占める業界です
- IMSが「一つの会社を大きくすること」だけを目指さない理由
- 「良い警備員が来ない」と嘆く前に考えたいこと
- 管制や経理に厳しくするだけでは、会社は強くなりません
- 小さな警備会社には、小さいからこその戦い方があります
- 人財を育てる会社には、経営者自身も育てられます
- 独立したら、最初に問われるのは経営者の姿勢です
警備業は、小さな会社が多数を占める業界です
警察庁の「令和7年における警備業の概況」によると、2025年末時点の警備業者は全国で1万949業者あります。そのうち、警備員100人未満の事業者は9,885業者で、全体の90.3%です。さらに、警備員5人以下の事業者だけでも26.6%を占めています。
つまり、警備業は一部の大企業だけで構成されている業界ではありません。多くの小規模事業者が、それぞれの地域や得意分野で仕事をしています。
これは、独立希望者にとって大きな可能性です。資本力や知名度だけで勝負が決まる市場ではなく、対応の速さ、現場との距離、教育、取引先との信頼によって、小さな会社にも十分に勝負する余地があります。
一方で、小さな会社だから自動的に選ばれるわけではありません。警備員の側から見れば、名前を知らない新しい会社へ入ることには不安があります。
- 給与は決められた日に支払われるのか
- 希望する日数で働けるのか
- 困ったときに管制が対応してくれるのか
- 現場で問題が起きたとき、会社は守ってくれるのか
- 教育や資格取得の機会があるのか
- 社会保険や労務管理は適正なのか
応募者を評価しているつもりでも、実際には会社も同じように評価されています。
IMSが「一つの会社を大きくすること」だけを目指さない理由
IMSグループは、グループ全体の規模を広げながらも、一つの会社や一つの事務所へ人を集め続けることだけを目指してきたわけではありません。
私たちが大切にしている考え方の一つが、**「小さいまま、増やす」**です。
警備業は人財を扱う仕事です。警備員がどのような現場を得意としているのか、どのくらい働きたいのか、いま何に困っているのか。社長や管制が一人ひとりの顔と名前を把握できなければ、適切な配置や育成は難しくなります。
一つの会社だけを大きくしていくと、社長から現場までの距離は少しずつ遠くなります。一方で、顔と名前が一致する規模を保ちながら、小さな経営単位を増やしていけば、現場との距離を保ったまま事業を広げられます。
そのためには、会社の数を増やすだけでは意味がありません。現場を経験し、人財を育て、数字と責任を理解し、経営を担える人財を増やす必要があります。
IMSにとって独立支援は、単に会社を設立させる制度ではありません。現場で働く人に次の役割を渡し、いずれは経営を任せられるところまで一緒に育てる取り組みです。
もちろん、任せることは放任することではありません。各社の社長が判断する範囲を尊重しながら、一社では解決しにくい課題はグループで支える。共通にすべきルールは共通にし、問題が起きれば一緒に見直す。各社の自律とグループの支援を両立させることが、IMSの考える「小さいまま、増やす」です。
「良い警備員が来ない」と嘆く前に考えたいこと
時間を守る。指示を聞く。報告をする。身だしなみを整える。近隣住民や通行者へ丁寧に接遇する。
これらは、警備員にとって大切な基本です。安全を預かる仕事ですから、「誰でもよい」と考えるべきではありません。
しかし、応募の時点ですべてができる人だけを採ろうとすれば、採用できる人はほとんど残らないかもしれません。
大切なのは、現在の完成度だけではなく、教わったことを受け止められるか、失敗を報告できるか、少しずつ改善する意思があるかを見ることです。
例えば、接遇は得意でも交通量の多い現場にはまだ不安がある人がいます。体力には自信があっても、報告が苦手な人もいます。最初から全員を同じ型にはめるのではなく、その人の長所と課題を見極め、適した現場に配置しながら育てていく。それが警備会社の役割です。
私たちIMSが大切にしているのは、単に人を集めることではありません。人材を「人財」にすることです。
管制や経理に厳しくするだけでは、会社は強くなりません
独立すると、警備員だけでなく、管制や経理、事務スタッフにも多くのことを求めたくなります。
しかし、指示の出し方が人によって違う、受注内容が電話やLINEに分散している、判断基準が決まっていない、責任の範囲が曖昧。この状態で「なぜできないのか」と叱っても、問題は解決しません。
スタッフの能力の問題に見えて、実は経営者が仕組みを用意していないことが原因の場合もあります。
もちろん、守るべきルールは必要です。曖昧な処理や無責任な対応を放置してよいわけではありません。ただ、厳しさとは声を荒らげることではなく、役割と基準を明確にし、できていないことを具体的に伝え、改善できる環境をつくることだと思います。
社長になったからといって、周囲の人が自動的に社長の考えを理解してくれるわけではありません。伝わらなければ伝え方を変える。ミスが続くなら作業の流れを見直す。最後にその責任を引き受けるのが経営者です。
小さな警備会社には、小さいからこその戦い方があります
創業直後の会社が、大手と同じ採用条件、知名度、福利厚生、システムで勝負するのは簡単ではありません。
だからこそ、別の強みをつくる必要があります。
1.警備員の顔と事情が分かる
人数が少ないうちは、社長自身が一人ひとりの得意不得意、希望日数、家庭の事情、資格取得への意欲を把握できます。それを配置や育成に生かせるのは、小さな会社の強みです。
2.現場の意見をすぐ改善につなげられる
必要な装備品、報告方法、給与の説明、シフトの連絡など、問題に気づいたらすぐに変えられます。承認に何か月もかけず、明日から直せることもあります。
3.成長の機会を渡せる
現場だけでなく、新人指導、管制補助、営業所運営など、本人の意欲に応じて役割を広げられます。その先に所長や社長という選択肢を示せることも、IMSグループの特徴です。会社の成長と一緒に自分も成長できる環境は、大きな魅力になります。
4.取引先との約束を丁寧に積み重ねられる
大きな案件を一度受注することよりも、必要な日に必要な人数を配置し、変更やトラブルに誠実に対応する。その積み重ねが、新しい会社の信用になります。
人財を育てる会社には、経営者自身も育てられます
警備員を育てる。管制を育てる。事務スタッフを育てる。
この言い方だけでは、経営者が一方的に教える立場のように聞こえます。しかし実際には、会社に集まった人財から経営者が教えられることも少なくありません。
現場からの報告で、受注時の説明不足に気づくことがあります。管制の苦労を知って、無理な受注を見直すこともあります。経理から数字を示されて、料金や経費の考え方を改める場合もあります。
IMSでは、誰もが先生になり、生徒にもなる「共育」を大切にしています。社長だけが正解を持っているわけではありません。互いに教え、教えられながら、会社そのものを成長させていくという考え方です。
「小さいまま、増やす」という考え方も、単に小規模な会社をたくさんつくることが目的ではありません。人財を育て、その人に役割と権限を渡し、経営を担う人を増やしていく。その結果として会社が増えていくという順番です。
独立したら、最初に問われるのは経営者の姿勢です
始めたばかりの警備会社に、最初から十分な人財、仕事、資金、仕組みがそろっていることはありません。
だからこそ、「良い人が来ない」「スタッフが思うように動かない」と周囲に原因を求める前に、自分の会社が選ばれる理由をつくれているかを考える必要があります。
- 給与と勤務条件を分かりやすく説明する
- 約束したことを守る
- 現場の声を聞く
- ミスを個人だけの責任にせず、仕組みも見直す
- 教育と資格取得に投資する
- 頑張った人に次の役割を渡す
派手な施策ではありません。しかし、この積み重ねが人財の定着と取引先からの信用につながります。
警備会社の独立は、会社の看板を掲げれば完成するものではありません。応募者を選ぶ立場になったと考えるのではなく、自分の会社も毎日選ばれていると理解する。そこから、本当の経営が始まるのだと思います。
IMSは、完成された社長だけを探しているわけではありません。最初から何でもできる警備員やスタッフを待っているわけでもありません。
現場や仲間から学び、人材を人財に変えながら、自分自身も経営者として成長する。そして、自分が育った後は、次に経営を担う人財を育てる。そうして顔と名前が一致する小さな会社を増やしていくことが、IMSグループの目指す成長の形です。
参考資料
執筆・監修:株式会社IMS 榎本 恒